へパリン問題

透析では、体外循環を回すために、抗凝固剤の使用が必須の条件となる。
ところが、中国産の豚を素材原料とするへパリン原薬の製造会社由来のへパリン製品により、アメリカで重篤なアレルギー反応を生じ、3ヶ月で400例の患者にアレルギー反応を認め、21人の死者を出したらしい。
そこで、同じ原薬を使用する日本の製薬会社3社が、へパリン製剤の自主回収を開始した。しかし、この3社で供給していたへパリンは日本のへパリンの70%にもなり、これを使用禁止とすると、日本の透析医療にたちまち、パニック状態が生じる。
もちろん違う原薬を使用する代替品を使えばいいのだが、急に生産ラインを増やせるはずもなく、圧倒的な供給不足となるのだ。
今回自主回収の対象となった、日本で作られている製品は、原薬は同じとはいえ、いままで日本で重篤なアレルギーを生じたことはなく、死者も出てはいない。何ら問題なく使用されてきているのである。
しかし、アメリカでのこの副作用の発生の原因がどこにあるか不明なこと、中国産、ということに対する現在のイメージの悪さが、自主回収の動きにつながったようだ。
しかし、代替品が供給不足で無いならば、透析をやめるわけにはいかないのだから、いままでのへパリンを使うしかない。
そこで患者への十分な説明と同意の上、現在のへパリンを、代替品が使用可能となるまでは使っていくという方針になった。ほかの方法がない以上、同意できなかったらどうするのだ、というところだが、それでも昨今の医療事情に従った手続きは踏まねばならない。