透析まとめ2

2-1.血液浄化療法各種
血液浄化療法:腎不全で体内に蓄積し、尿毒症症状を引き起こす毒性物質(尿毒症毒素)を除去することが目的。
尿毒症毒素除去:
{・小分子量物質:電解質尿素クレアチニン、 尿酸、各種酸、塩基等。
{・中分子量物質:分子量500-5000までの各種      毒性物質:PTH、Na利尿ホルモン、等各種ペプチド
2. 水分管理:溢水による、心不全、肺水腫、浮腫を改善する。
血液透析で改善できるその他の病態
電解質異常、アシドーシス、高血糖性昏睡、薬物中毒、急性アルコール中毒、横紋筋融解症、クラッシュシンドローム
2-2.血液透析
透析と濾過
血液透析(HD):半透膜を使い、血液と透析液との間の自然拡散により、毒性物質の除去を行う。電解質是正、小分子量物質の除去に優れる。
血液濾過(HF):フィルターを通して、限外濾過圧により、水分、毒性物質を濾液として除去。不足した体液を補液として血液内に注入。中分子量物質の除去に優れる。
血液濾過透析(HDF):半透膜と透析液を使った拡散による除去と、限外濾過圧による濾過および補液を同時に行う。広い物質除去スペクトラム、時間当たりの除去効果大。
除水のみ(ECUM):半透膜、フィルターにて、限外濾過圧により、血液中の水分を濾過する。溶質の除去がないため、血漿浸透圧が保たれ、HDに比べ、循環動態がよく保たれる。
持続血液透析濾過(CHDF):循環動態が不安定で、急速な除水、毒性物質の除去が危険である場合、緩徐持続的透析、濾過を行う。多臓器不全、敗血症等。
CHDFの実際
適応は重篤な循環機能障害を伴う腎不全。MOF、ショックなど。救命のために、除水、尿毒素除去が必要な症例。
必要なもの:
CHDFコンソール(旭メディカルACH-10)+CHDFダイアライザー(Panflo APF-10S)+血液回路(CHD-400M)+これを組み立てることができる人(MEなど。医師も自分で組み立てられるようにしておくとよい。)
②BA:多くの場合は右(左)大腿静脈にアーガイルのダブルルーメンカテーテル(11Fr,20cm)を留置する(アーガイルダブルルーメンキット、及び縫合セット、カテラン針23Ga、局麻、ヘパ生を準備)。不能の場合は、外頚静脈、右鎖骨下静脈でもよい。ダブルルーメンが無理ならば、Alineから脱血し、いずれかの静脈に返血しても良い。
③透析液(サブラッドBS2リットルバッグx使用予定量)+抗凝固剤(フサン30mg/hx予定時間、溶解は5%ブドウ糖20~50mlに。)
必要設定事項:
①血流量Qb=100~150ml/min。循環動態により決定。
②抗凝固剤投与量:フサン30~50mg/h。DICでよほど末梢が固まりやすい、などで無い限り、30mg/hで十分。一日フサン使用量が720mgを越えると保険で切られる可能性が高い。
③ろ過量Qf;透析量Qd;補液量Qi: 
時間除水量=Qf-(Qd+Qi):0.0~1.0l/hなど。必要に応じて。
一時間あたりのサブラッド消費量=Qd+Qi:多くの場合1.0l/h程度にする。
Qdが大きいほどカリウムなど電解質や小分子物質の補正が早い。
Qiが大きいほど不明の毒性物質、中分子物質の除去が早い。
Qfが大きいほどTMPが上昇しやすい。
④透析時間:明朝10時に採血結果を見て、CHDF継続の可否を決める、などの方針を立て、重症度と合わせ考えて、透析時間を決める。最低でも6時間は回す場合が多く、重症例では24時間回したほうが良い。
設定例:
{Qb=120ml/min、フサン30mg/h、Qf=1.2l/h、Qd=0.5l/h、Qi=0.5l/h 20時から翌日10時までのプランで14時間}
これで翌日までに2800ml除水する標準的なCHDFとなる。サブラッド使用量は14l=7バッグ、フサンは420mg=50mgx8V+10mg+2V、これを21mlの5%TZに溶解し、コンソールのシリンジポンプで1.5ml/hの速度に設定すればよい。多くの場合、Qd:Qi=1:1の設定で良い。
注意事項:
呼ばれるのはアラームが鳴って機械が止まったとき。アラームがなる原因は大体次の3つ。
ポンプが止まったままだと回路内凝血してしまうので、取り合えずアラーム解除ボタンを押し、透析の停止ボタンを押し、Qbを低流量に落とし、透析開始ボタンを押す。それからまたアラームが鳴るまでの間に、モニターに表示されたアラームの原因を確認し、その原因に対応して以下のことを試す。
①血流不足:脱血不良。カテーテルの挿入長を変える、回転させてみる、挿入部の中心静脈に血流が集まるように体位を変えてみる、Qbを落とす。
②静脈圧、動脈圧上昇:まず、Qbを落とす。カテーテルの屈曲確認、チェンバー内の凝血確認、リンスしたのち、抗凝固剤増量、など。
③TMP上昇:trance membrane pressure=ダイアライザー透析膜の目詰まり。まずQfを落とし、リンスしてみる。その後少しずつQfを上げていく。Qfを変えたときはそのつど、除水量にあわせてQd,Qiも変えること。凝血傾向あるなら抗凝固剤もアップしてみる。
リンスについて:血液回路、ダイアライザーを一度生食で洗い流すこと。脱血側をクランプし、三活につないである生食を高流量で流して、回路を生食で満たす。これにより、凝血や目詰まりを回除する。
2-3.腹膜透析
腹膜透析(CAPD):血液透析における半透膜として、腹膜を利用する。腹腔内にカテーテルを留置し、2Lの透析液を注入、4~6時間ごとに透析液を交換する。中分子量物質の除去に優れる。除水は透析液中のブドウ糖の浸透圧により行う。
選択と適応
positive selection:社会生活の維持、QOLの維持が目的
negative selection:①BA作成困難②重篤な心血管障害③抗凝固剤の使用困難
contra indication:腹膜癒着例、鼠径ヘルニア、人工肛門、教育訓練に耐えられない、など。
変法:NPD(nightly PD):夜間のみ自動腹膜透析装置にてCAPDを行う。腎機能が比較的保たれている症例で可能。
合併症:腹膜炎、腹膜機能低下、カテーテル位置異常、硬化性被嚢性腹膜炎(SEP)
比較 HD CAPD
手術 シャント作成 カテーテル挿入
透析場所 医療施設 自宅、職場
施行方法 間欠的 週3回4~5時間 連続的 毎日24時間
透析効率 良い やや悪い
循環動態への影響 大きい場合あり 小さい
抗凝固剤 必要 不要
食事制限 厳しい 緩い
行動制限 非透析日は自由 透析中も自由に行動
短所 穿刺時疼痛、食事制限 毎日の清潔操作、腹膜炎の危険
2-4.その他の血液浄化療法
血漿交換:生体にとって害のある成分を含む血漿を除去し、代わりに新鮮凍結血漿を補充する。遠心分離法と、膜分離法があり、膜分離法であれば通常の透析施設で可能。クエン酸中毒等の合併症に留意。
直接血液吸着法:吸着剤を充填したカラムに患者血液を還流することにより、有害物質を除去する。適応症;肝不全、腎不全、薬物中毒。
エンドトキシン吸着:ポリミキシンBを充填したカラムでのエンドトキシンの吸着。敗血症性ショック等、重症感染症に適応。
白血球吸着:潰瘍性大腸炎等。白血球除去率84%。治療へと結びつく機序は不明。
当院で可能な特殊透析項目と適応
血漿交換:肝性脳症、劇症肝炎など
免疫吸着:ギランバレー症候群 悪性関節リウマチ
白血球除去:潰瘍性大腸炎
LDL吸着療法:閉塞性動脈硬化症による下肢壊死
β2ミクログロブリン吸着:アミロイドーシスによる手根管症候群
エンドトキシン吸着療法:エンドトキシンショック