究極の選択

昔交際していた相手から試された。原典は「アーサー王物語」らしい。

ある国の王子が、別の国の王女を妻に迎えたが、その王女には呪いが掛けられており、昼間は美しく、夜は醜い姿となるか、昼間が醜く、夜には美しい姿となるか、どちらかしか選べない、という決まりがあった。そこで、王子は王女から、「あなたは私が夜美しいのを選びますか、昼間美しいのを選びますか?」と選択を迫られた。これは昼、夜と言われているが意訳すると「あなたと二人だけの時に美しくあるのと、人前で私が美しくあるのとどちらを選びますか?」という選択だ。
これは交際している男女でいつでも自分の身に引きつけて考えられる選択問題だと思う。


さて、皆さんならどちらがいいでしょうか?自分の近しい相手が、自分にだけ理想的であってくれることと、公共的に理想的な人物であってくれることの、どちらを選ぶか、と言ってもいい。


当時の私は、今より急進的に世界の平和より自分の幸福を取る、という立場だったから、もちろん夜だけ美しくあることを選んだが、実はこの話には別の正解がある。じっくり考えたい方のために一応畳んでおく。畳んだつもりがなかなか畳まれてくれないので、色を変えてみる、、、
この若き日のアーサー王子が、王女の問いにどう答えたか。
「私には決められないから、君がいい方を選んでくれ」と答えると、呪いが解けて、王女は昼も夜も美しいままになったとさ。

当時この「正解」を知った私は、悔しくて、そんな優柔不断なやり方が正解なんて理不尽だ、問われた選択を選択しないなんて、対話における自分の主体性を放棄することを推奨するなんて、人間関係として間違っている、などと感じた。

けれど、確かに、これは王子の問題というよりも、王女の問題であり、彼女が選択すべき問題だろう。相手の主体性を奪わないという、二人の関係の構築法を選んだ王子には、歪みのない、理想的な結婚生活が待っている、ということが寓意されているのだろう。

逆にいえば、私には相手を自分の意のままに丸めこもうとする傾向が強いということが、明らかになってしまったことになる。交際相手を試すテストとしてなかなか面白い寓話ではないだろうか。