ピレネーの城

さて、2作目の模写壁画はまだ少しずつ手は入れたいところだが、ほぼ完成に近づいた。
あとは石城の苔と、海の遠方、雲のグラデーション、空の色にもう少し手を加えたら完成といえる。

ピレネーの城が何を描いているのか、模写しながらずっと考えてきた。考えていくうちにこの絵のテーマは、顔、もしくは顔を映す鏡、というところに行き着く気がしてきた。
マグリットは、ダリやエッシャーと括られて、シュールレアリスムと評される画家だ。
現実にはありえない光景を、リアリスティックに描くことで見る人々の意表を突くのがその作風だと思われている。
このピレネーの城でも、やはり中に浮くはずの無い岩石が浮いて、その上に小さな城がある、というのが描かれている内容だが、この絵の中心は、なんといっても圧倒的な存在感で中心に位置する岩石だ。この存在感は、この絵を見る者への鏡として作用しているのではないかと考える。非現実的な内容であろうと圧倒的に示される存在感は、翻って見る者自身の存在を意識させる。
広々と広がる海と、鮮やかに雲が浮かぶ青い空の中で、ただ悠然と存在するという事実が、他者に依存することなく存在はしていける、という実存的なあり方を示しているのではないだろうか。