地域に根ざして

勤務医のころは、患者さんにあっても、その病気は診ても、人を見るつもりはほとんど無かった。つまりは「症例」を重ねる、自分の医者としての経験値を稼ぐのに精一杯だった。
しかし、地方の開業医になってみると、ご近所さんが受診されたり、自分の趣味の領域での友人が診察に着たり、人を見ずに仕事をするわけにはいかなくなった。それはいろいろなしがらみが出てきてやりづらいこともあるが、また仕事の別の方面での楽しみでもある、と考えるようになった。
こうして仕事の面でも、自分の住んでいる土地、人と繋がっていくことが、本当の意味で地に足が着く、ということではないだろうか。一人ひとりの価値が希薄で、いつでも仮住まい、といった趣の、都会では、こうした地に足の着いた生活になりにくい、と思う。