医療の安全は当然か。

人の命を扱うのだから安全な医療が行われるのは当然、というような論調の報道をよく聞く。そのような言い方を聞くとき私はいつも違和感を覚える。
医療も人為である以上、ミスや事故は必ずある。なるべく減らす方向で努力するのは当たり前ではあるが、人の為す行為である以上、100%安全であることなどありえない。また、事故というものは交通事故などと同じく、その件数の増加の要因となるような要素を取り除く努力は分析により可能かもしれないが、それでも件数を0とすることは不可能だ。
医療によって予測できない不幸な事態が生じる可能性は常に存在する。医療を受ける側はそれを事実として受け止める必要がある。誰も不幸な目には会いたくはない。だから不幸な目にあえば不満感情も起こり、何か相手の落ち度を指摘し、しかるべき補償を受けたいという気持ちになることは分かるけれども、医療も契約行為である以上、契約段階でその了解は為されているべきである。
医療には事故やミスのリスクがあり、また治療結果として疾病や身体機能障害の改善というベネフィットがある。リスクとベネフィットを天秤にかけて、ベネフィットの方が大きいと、治療者、患者の双方が納得同意したときに治療契約は成立し、治療行為が為される。治療契約とはそういうものだ。
ただ、リスクというものが確率の問題である以上、少し了解は難しい。重篤な合併症など滅多に起こらないものであるが、起これば非常に不幸な結果となる。滅多に起こらないことならまさか自分には起こらないだろうと誰もが思うものだから、起こってしまえば事前に説明を受け、了解していたはずといわれても納得がいかない。
この辺は、ずっと昔にここで触れている、この指摘に近い現象だと思う。
http://d.hatena.ne.jp/kabalah/20041108#p2