今週のone piece

回顧モード。この回顧モードによって、その土地に生じている諍いが、どんなに根の深いものなのか、そもそも善意で始まったはずなのに、それがどうして捩れていったのか、悪党がそのようにならざるを得なかった悲しい過去、などが説明されるのだ。「ヒルククの桜」「砂漠の王国」「黄金郷」など、すべてそうして過去からの因縁が回顧モードによって丹念に描かれる。そうすることで人々の想いが、如何に年月を重ねた、重いものであるか、が表現され、その結果人々の情念がより深みのあるものとして、読者に伝わるのである。
パッフィングトムという海列車の創立がここで明かにされている。トムはこの列車の開発により、ウオーターセブンの街に多大な貢献をしたにもかかわらず、最初の規定通り、死刑にされてしまうのだろう。そうしてここからフランキーの情念が深みを増して描かれることになる。

今回、コミックの新刊が出て、その扉ページに作者の尾田栄一郎氏の言葉があり、驚いたことは、彼が私とオナイ年だということだ。これだけ多くの人々に支持され、感銘を与えうる、クリエイティブな仕事をしている人が、自分の同い年だということ、これはやはりショックであり、かつ素直にすごい同い年もいるものだと、感心する。たかが漫画に過ぎないと、馬鹿にする人々もあるかもしれないが、私に言わせたら、彼は、確実に「精神的長生き」できるところにすでに到達している。これだけしっかりしたストーリーを編み出せること、キャラのそれぞれに深い設定を作れること、など、印税で儲かってうらやましいね、ということ以前に、豊かな才能に恵まれた人なんだろうなあ、とそのことがうらやましい。今後家庭ができれば、ますます家族の情などを丹念に描き出すことができるのだろう。成功に安住せず、今後も豊かな作品を作り続けて行って欲しいと切に願う。