透析患者とパラシクロビル

透析患者でもしばしば起こる帯状疱疹
この治療薬のパラシクロビルだが、今日で3例目の副作用例を経験した。
パラシクロビルの帯状疱疹での常用量は3000mg/day。
しかし、透析患者ではこれを250mg/dayまで減らさなければならない。
これは添付文書を終りまで良く読むとCCr<10ml/min例での投与方法として記載してある。
しかし、以前の添付文書にはこの記載は無かったこともあり、私はこれを知らずに
1500mg/dayで処方した。過量投与である。
投与二日目には精神症状があらわれ、酩酊状態となった。
パラシクロビルは透析性があるので、1日置いて透析を8時間行ったが症状の改善が見られない。
結局、脳に移行した薬剤が容易には透析で除去されない状態と考え、1日入院してもらうこととなった。
この5年で同様のパラシクロビルによる酩酊状態となった患者を3人経験している。2例が当院での処方、1例は他院からの処方だ。これだけ繰り返しているのに、同じ副作用を引き起こしてしまって非常に反省している。
薬剤が代謝か透析で除去されれば後遺症は残らない副作用ではあるが、不穏状態となった患者さんを抑制するのに周りは非常に苦労する。
今回の教訓を。
・パラシクロビル、透析患者では12分の1、透析後の投与を。
・副作用発現した場合の透析開始は早い方がよい。
・透析開始前後で薬剤の血中濃度測定が可能ならばしておけばよかった。
明日には元の患者さんに戻っているはず、と思うが、一刻も早くあの酩酊状態から治っているのを確認したい、という思いで気になって寝付けない。