Robertsさんのお話

先週末京都で参加した、腎塾の同期会。そこで特別講演としてRobertsさんという方の話を聞いた。
彼の話の中心は、臨床では如何に根拠の無い治療が、病態生理、薬理作用という幻想の下、まかり通っており、実際に役に立つ医療かどうかは臨床研究を行ってみないとわからない、というものであった。そこでは彼が行った交通事故外傷治療における二つの臨床研究による証拠が示された。交通事故頭部外傷において脳浮腫改善目的でかなり当然の処置としてステロイドが投与されていた。しかし、実際にはこのステロイドは有害であり、プラシボ投与のほうが救命率が良かった。
さらに、安価な薬であるトランサミンが、出血を伴う頭部外傷では救命効果がある、ということがわかった。という2点である。
これらの証拠は現在の救急医療に生かされているのだろうか?
私の疑問は、救急の致命的な外傷治療の現場で、本当にプラシボ投与というようなブラインド下の臨床試験が可能なのか?実際は重症度による処置の差が研究の結果に系統誤差として存在するのではないか、という点である。