新型インフルエンザ対策会議

昨晩、この地域周辺の透析施設の医療関係者が集まり、新型インフルエンザ対策の方針を決める会合が持たれた。
感染者発生初期の対応と、重症化時の対応、医療スタッフが感染した場合の人員の相互供給など、課題が話し合われた。
感染者発生初期には、やはり感染の蔓延は防ぎたいので、時間的空間的隔離を行う。同時に感染者の透析に関わるスタッフを全力で感染から防御しなければ、通常の透析も回せない。
どの施設も人員に余裕があるわけではないから、このような臨時体制では非常に苦しい部分がある。
たとえば、当院では火木土の午後には透析をしていないので、感染患者の透析は、火木土の午後で行うことになるが、そうすると、連日準夜帯夜勤を続けなければならないスタッフが出てきて、非常に苦しいことになる。


私は、こうした感染防御の体制は、新型インフルエンザワクチン配布までの懸案、と考えていた。しかし、会議で、ワクチンには感染防御の効果は期待できず、ワクチン配布後も同様の感染防御体制が必要になる、との、ほかの医療者の意見に飲まれた。
けれど、ワクチンがただ、重症化予防の効果しかないとしても、そもそも新型インフルエンザという疾患の性質を考えれば、ある程度重症化しない方策が採られた後ならば、苦しい感染防御体制を続ける必要があるのか、私は疑問に思う。
新型インフルエンザは、誰もが抗体を持っていないのだから、必定、誰もが一度は必ず罹患するのである。そういう疾患だ。そして回復後、誰もが抗体を持つようになれば、抗原性の変異により、新型インフルエンザは、今までの季節性インフルエンザの仲間入りをするのである。私はそのように理解している。
誰もが必ず罹患する病気を、感染防御したがる、その根拠は何であろうか。それは、透析患者においては、重症化する危険が高く、致命的となる可能性があるので、致命的とならないような、対策、もしくは治療法ができるまでは、感染を先延ばしにさせる、という意味であろう。
それならば、ワクチンが透析患者に行き渡る、という時点を、一つのエンドポイントとして定めてよいのではないだろうか。
アメリカで行われていたような、故意に感染するためのパーティーまで開く必要はないが、現代の医療水準で取りうる重症化を防ぐ対策がとられた後なら、医療資源を疲弊させる、無理な感染防御体制をずっと続けていく必要は無い、と考える。