吸血鬼ハンターD

菊地秀行作のファンタジーシリーズ。
これを喜んで読んでいたのは私が高校生の頃だからもう15年も前のことで、なぜ突然このシリーズのことを思い出したのかわからない。
ワンピースなどと同じで、これといった内容は無く、ただ強いものが強いものを斃していく*1、少年漫画の世界が活字で表現されているシリーズなのである。
ダークな世界設定と主人公の宿命、かつて最高の栄華を極めたけれど、衰退しつつある「貴族」という存在。読む者を引き込む表現力があり、私は娯楽としてこの世界を楽しんだ。
しかし、私小説とか現代小説と比べて、こうした娯楽作品を読んでいることは、人に誇って言えることではないような気がして、あまり人前で話題にせず、いわば、「こっそり」読んでいた。
ここまで歳をとってようやく、「吸血鬼ハンターD」が、ドストエフスキーなどの作品と比して、何ら劣っているわけではなく、単にジャンルが異なるというだけのことで、作品として価値が高いことはいずれも変わらない、と堂々と言えるようになった。
少年漫画にしてもそうだが、道徳的な規範や、得られる教訓がなくても、純粋に面白いと言えるものは、立派な芸術作品だと私は考える。今読んでどう思うか、それは読んでみないとわからないけれど、私がこの世界から離れている間にも細々と続編は出版されていたようで、読んでない作品が4,5本ある。今度街に出たときにでも購入して読んでみようと思う。
「私たちはかりそめの客なのだ」

*1:この「斃す」という字を使うところが"D"の世界である