resident

私の下に研修医がついて2ヶ月になる。もともと一ヶ月の予定であったのが、当科での研修が有意義ということで本人の希望で1ヶ月延長となった。私は彼女にできるだけ実技をさせること、診断、検査方針立案、治療方針立案を彼女の意見をまず聞くこと、を心がけて指導してきたが、彼女はいくらかでもこれからこの世界で楽しんで働いていけそうな手がかりを得てくれただろうか。私自身の方針も部長によってころころ変えられてしまうので、結局彼女は私よりも部長に方針を聞いたほうが、手間が省けるということを学びつつある頃かもしれない。
私自身が彼女に感謝されるか、軽蔑されるか、それはどうでもいい。
けれども、仕事というものがどのように社会的責任を伴うもので、かつ、つらいこともあるなりに、やりがいもまたあるということを、少しでも実感してもらえただろうか。
たとえ静脈ラインを一つ取ることにしても、うまく入らず、患者さんに痛い思いを何度もさせてしまったことを、とても悔しく思い、技術上達を強く心に誓う気持ち。スキルが上達し、うまくラインが取れて患者さんも喜んでくれたときの喜び。そういう些細なことではあるが仕事で得られる目標と楽しみ、そういうことの足がかりを、彼女に与えることが出来ただろうか。少しでもそういう志を持ってもらうことが出来たなら私としては彼女に有意義に研修していただくことが出来たと考える。
膀胱全摘の長い手術が終わり、術後を診て夜の22時位に晩飯に行こうかというとき、私が男性であり、彼女が女性であるので、晩飯に誘うことは控えた。そういうことに関係なく、晩飯とビールのいっぱいもおごってやればよかったなあ、とも考える。そういうことを彼女が望んでいる風もあまり無かったが。せめてその膀胱全摘の患者さんが無事に退院していく姿を、彼女とともに見送ることができれば、と思う。