24.8.2005.

朝は外来だったが、営業終了間際に他科から滑り込みで依頼のある新患が多かったので、昼飯を食べるのがだいぶ遅くなった。
当科入院中で別の担当医の症例なのだが、担当医が手術中であったため、私の外来で検査していた症例。結石による水腎を検索するためDIP施行していたが、左腎が無機能、著明な水腎を認めるという段階で、DIP中にシバリングを起こし、SpO2も低下した。Septic Shockを疑い、至急に左の尿管カテーテルを留置した。
帰室後抗生剤輸液を始めたが、血圧の低下、意識の混迷が続き、ショックが重症化し手いると判断されたため、夕方からエンドトキシン吸着療法を開始することとなった。さらにショックから多臓器不全の一環として腎不全が来る可能性が高かったため、吸着後に引き続いて、CHDFを回すこととなった。
これらのICU並みの集中治療により、彼女は救命され、8/25朝の現在、血圧、呼吸状態、意識ともに正常な状態に戻っている。
尿路結石は疼痛は強いけれども、命と関わることのないような、良性疾患である。しかし、このように、結石カントン>水腎症腎盂腎炎>敗血症>ショックというコースが唯一、致死的となりうる病態のコースである。そしてこの症例はまさにこのコースを辿った。普通は水腎が着ている段階で症状があるから受診するのだが、症状に乏しい場合や高齢者などでは、来院が遅れ、この危険なコースを辿る場合がある。
今回も高齢の女性であったが、迅速に尿管カテーテルを留置し、腎盂の膿尿のドレナージが出来たこと、イノバンによる昇圧効果が不十分であるとの判断を迅速に下し、早期にダブルルーメンを留置し、エンドトキシン吸着に踏み切ったこと、これらは彼女を救命できたキーポイントであったともいえるであろう。
しかし、いつもそう思うのだがエンドトキシンの吸着は果たして必要なのかどうか。確かに血液浄化が始まって15分から30分程度で血圧が戻ってくるのだが、原発の感染巣の対処がなされていれば、自然にショック状態を脱するとも考えられる。昇圧が見られる症例では吸着をしていなくても上がっていたのではないかと思われるし、逆に吸着をはじめても何の効果も見られない場合もある。こういう緊急時の治療法として称揚されているからやってしまうが、本来人間の回復力というものは、原発巣の問題が解決されていれば、自然にショック状態から回復するものではないか、と私は考えるのだが、、、
今回の症例にしろ、イノバン10ガンマ投与でSBPが100を切っているという状態でエンドトキシン吸着に踏み切ったわけだが、尿量がつくまでインを増やしてもう少し様子を見るという選択肢もあったのではないかとも思う。
やってうまくいった結果について、やらなくてもうまくいったのではないかと、あとから想像をめぐらすことは出来るが、実際にやらずに手遅れになる可能性について考えると、なかなかやらない、という方向を選ぶことはむずかしい。