本気になることの難しさ

ウェイトトレーニングを何のためにやっているかというと、筋繊維の肥大化が目的だ。
これにより、理想の体型を造形する。
その目的の話は置いておいて、筋トレで如何に筋肉を追い込むか、という話をする。


筋肉の肥大化のためには、目的とする筋肉に負荷をかけてやらなければならない。それも、ちょっと疲れる、という程度ではなく、ぎりぎりまで使い込んで、もう動かせない、動かさなくても痛い、というくらいまで追い込まなければならない。
そうして初めて、筋肉は、「このままの筋力ではこの環境で生き残れない。更なる負荷に耐えられるように、強化、肥大化を計るべき」と認識し、代償性肥大、超回復という減少を起こす。これが筋トレだ。

そのため、例えばベンチプレスでは、ピラミッド形式のメニューを行う。例えばマックスで90kgのウェイトで8回程度上げ下げすることが出来るならば、アップとして50kgで15回上げ下げし、これを1つ目のセットとする。以後、10kgずつウェイトをあげては10回ずつを1セットとして90kgになるまでに3セットをこなす。そしてメインの90kgを上げられるだけ回数をこなすが、これが10回も上がるようなら、マックスとしてウェイトが足りない、ということになるので、さらにウェイトを上げる。
そして、マックスのセットが8回くらいで終われば、次は10kgずつウェイトを下げて、また4セットくらい行う。
こうして、ウェイトを下げることで、90kgが上げられなくても残っている余力を使い果たし、ぎりぎりまで乳酸を筋肉に溜めるのが目的だ。


しかし、マックスウェイトのとき、どんなに本気でやっているつもりでも、一人でトレーニングしているときと、仲間と一緒にやっているときとでは、上がるウェイト、レップ回数、共に少し差が出る。
一人では90kgが5回しか上がらないのに、友人が補助に入ってくれると、90kgは6回上がり、さらに100kgが3回とか追加で上がるのだ。
補助が入るために潰れたとき、起き上がれなくなる危険が無い、ということで、安心してウェイトに取り組めるという違いはもちろんあるが、それだけではない気合の違い、というようなものが、ある。
気合の違いだけなら気の持ちようであるから、一人のときも何とかそのような気合でウェイトに望もうと試みてみるが、全く上手くいかない。恐らく、火事場の、というような非常事態ではもっと段違いの力が出るのだろう。

目的は筋肉を追い込むことなので、必ずしもマックスウェイトの重さ、レップの多さは重要ではない。筋肉に疲労が蓄積しさえすればいいのだが、限界まで追い込む、ということもやはり一人では達成しづらい。本当は後2,3回上げ下げ出来たかもしれないところで辞めてしまっている可能性が高い。

このような本気になる、という事柄はたとえ実際の試合になっても難しいことなのだろう。よく、アームレスリングの試合前にチームメンバーが仲間に自分の頬を叩かせているような場面を見るが、あれは痛みで交感神経を高め、極限まで身体能力を引き出そうという意図だと考えられる。