青木先生の講義Part2

今回も面白く聞けた。義理の弟にあたる同級生の医者と一緒に聞いた。彼も面白く聞いたようだった。
この青木先生の話の面白さが分かるのは、ある程度臨床に携わった医師だけの特権である。この面白さをなんとか他人に伝えたいと思うが、なかなか難しい。
今回は大まかにいえば、前回と言いたいことは同じなのだが、
・培養感受性検査の罠:In VivoとIn Vitroの乖離。Sと出てもRのこともある。菌種によって、SになるはずがないのにSと出ていたり、RのはずがないのにRと結果が出ることがある。
さらに「報告されない」結果もあるということ。例えばペニシリンGにSであれば、アンピシリンにSなのは自明のことらしい。こういう報告されていないけれどSである薬もたくさんあるとのこと。
・治療薬投与量は十分量で:耐性菌の出現抑制。Intensityの維持が必要(炎症改善により薬物の局所移行性が低下)
・「重症」であるからといってスペクトラムを拡げるな:重症度と病原菌のスペクトラムに相関は無い。
感染症であればCrescendo or decrescendoの経過:そうでなければ他の疾患の合併などを考える
・Too lateという概念:適切な抗生剤であっても、敗血症末期状態などで開始しても助からない。
・死に行く人に仮住まいする感染症という考え方:末期患者での緑膿菌感染など。治療の必要はあるのか?

彼の話の何が面白いのか。われわれ日常診療に携わる医師が、当然と思ってやり過ごしてしまいそうな感染診療における思考のpit hollを適切に暴いて、指摘してくれることの爽快さがあると思う。もちろん、分かりやすくするために極端な例が多かったし、人体や、対患者関係、医療経済の問題はそこまで単純に割り切れない部分が多く、耐性菌出現や菌交代の抑制ばかりを最優先できない場面も多くあるだろう。
けれども、それでも多くの医師が誤った方向に流れているという事実があり、それを正すために声をあげる人がいるのは頼もしい。自分の診療もこの講義でかなり方向修正された部分があると思う。