ドライウェイトのルーズな管理の必要性

透析患者のドライウェイトの設定は、なかなかこれといった決め手に乏しく、Empiricに決まって行く部分も大きい。
心胸比、血圧、浮腫の有無で設定していくわけだが、透析中の低血圧発生とのにらめっこで進んでいく作業で、医療側としては溢水とそれによる感染症は患者の生命にかかわってくるし、長期的にも溢水傾向による高血圧は、心脳血管系障害のリスクとなるので、ドライウェイトは絞り気味にしたい。けれども、患者やスタッフサイドは、透析中の低血圧とそれによる迷走神経反射を忌避し、身近なリスクを嫌う傾向が強く、結果、ドライウェイトは甘くなる。
これまでも何度もそういう軋轢をスタッフとの間に生じてきたわけだが、今回降圧薬を中止し、ドライウェイトを絞ることによる、循環器系の正常化を目指した症例で、脳出血という転帰をたどった症例があり、あまり厳格なコントロールは良くないのか、と思う部分も出てきた。
ドライウェイトを絞り過ぎて、脳梗塞となったというわけではなく、脳出血なので、逆の事態が生じたわけだが、降圧薬中止なども行っているので、その辺りの因果関係も気にはなる。
降圧薬を使いながら、透析中の低血圧を理由に、ドライウェイトを上げる、などという方針は、医学的にいえば、全く医療資源の無駄使いで、(褐色細胞腫など存在しないという前提の上で)普段の血圧が持続的に高いなら、ドライウェイトは下げるべきである。
しかし、プラズマリフィリングが極度に悪い症例においては、透析開始前には血圧が200を超えているのに、透析終了時には80を切る、というようなこともよく見かける事態である。こうした場合に、短時間作用型の降圧薬を使いながら、あまりに血圧が下がり、浮腫の傾向もないのなら、ドライウェイトを上げるという方針も採択していくべきなのであろうか。BNPとか中心静脈径とか、他の指標も使ってはいるのだが、どうもなかなかすっきりとしたドライウェイトのガイドラインのようなものは作りにくい。