呪縛

自分のことをわかって、評価してくれる人がいたら、という気持ちにとらわれることが多い。
だからもう開業したのに手術できる場所を提供してくれる人がいるかどうか気になったり、利害の絡まない友達を探したりしてしまう。
そんな人がいなくても生きていけるし、自分で自分を肯定できればそれでいいはずなのだけれど。
いつまでたっても進歩しない。
5年前にも引用している。永井均著「子どものための哲学対話」より。

2-6 友だちは必要か?
ペネトレ:友だちって、必要だと思うかい?
ぼく:そりゃあ、絶対、必要だよ。ひとりぼっちじゃ、さびしいじゃん。
ペネトレ:ぼくは友だちなんかいなくたって、ぜんぜん平気だよ。
ぼく:ペネトレは猫だからさ。
ペネトレ:人間だって、ほんとうは、おなじなんじゃないかな。いまの人間たちは、なにかまちがったことを、みんなで信じこみあってるような気がするよ。それがいまの世の中を成り立たせるために必要な、公式の答えなんだろうけどね。でも、その公式は受け入れないこともできるものだってことを、わすれちゃいけないよ。
ぼく:猫のことは知らないけど、人間は、自分のことをほんとうにわかってくれる人がいなくては、生きていけないものなんだよ。
ペネトレ:そんなことはないさ。そんな人はいなくたって生きていけるさ。それが人間が本来持っていた強さじゃないかな。ひとから理解されたり、認められたり、必要とされたりすることが、いちばんたいせつなことだっていうのは、いまの人間たちが共通に信じこまされている、まちがった信仰なんだ。
ぼく:そんなことを言ったのはペネトレだけだよ。
ペネトレ:人間は自分のことをわかってくれる人なんかいなくても生きていけるってことこそが、人間が学ぶべき、なによりたいせつなことなんだ。そして、友情って、本来、友だちなんかいなくても生きていける人たちのあいだにしか、成り立たないものなんじゃないかな?
ぼく:そんなはなしは、はじめて聞いたよ。