患者自己負担金

他院から転院した患者の指摘により、当院での自己負担金の計算が間違っていたことが判明した。
間違っていたというか、制度の適用優先順位を知らなかった、ということだが、いずれにしろ、患者さんから自己負担として、本来もらうべき以上の料金をもらっていたという事実がわかったのだから、責任者としては真摯に対応しなければならない。
もらいすぎていたと言っても例えば10年で24000円というくらいの額ではあるが、これは制度自体に問題があるので、以下のような説明文を患者に配布することにした。

透析医療費 自己負担金に関するお知らせ

当院で、腎不全で透析をしている患者さんの医療給付制度として、
特定疾病医療給付制度:月額負担が1万円まで
② 重度障害者医療給付制度:通院では1日当たり200円まで
月4日までの負担
という二つの制度があります。

もし、これらの制度がなければ、1回の透析につき、若年者では3割負担で7500円、高齢者では1割負担で2500円程度の負担となります。

しかし①という制度があるので、若年者の方は、月1回目の7500円と2回目の2500円分のみ負担することになります。つまり、月に14回程度透析を受けるうち、2回しか自分でお金を払う日がありません。
さらにここに②の制度が効いてきて、この月に二日の自己負担金についてそれぞれが1日200円までの限度となりますので、2回で400円、
つまり月額400円の支払いとなります。

ところが高齢者の方は、1割負担なので1回の透析につき2500円の支払いで、①の制度の1万円を超える為には月に4回支払いをします。そうなると②の制度により4日支払いをする機会があったことになるので、4日分、800円の支払いが必要となります。

つまり、①と②の資格がある透析患者さんにおいて、高齢者は月額800円、若年者は月額400円という負担になり、福祉という考え方からすると、自己負担に関する負担金の逆転現象が起きてしまっています。

当施設では、平成20年10月に、他院から当院への転院をされた患者さんから指摘があるまで、①と②の制度の優先順位を知らなかったため、
すべての透析患者さんに同じ自己負担金額800円をお願いしてきました。(平成20年8月までは、②の負担金が1日100円であったため、月額400円だったと思います。8月1日から負担が1日200円に上がっています。)

このように①の制度を利用したうえで、②を適用して、若年者だけ負担金が減るのは、福祉の本来の考え方からすると、矛盾した制度だと考えるので、②の制度に関わる県の福祉課に、この矛盾点を指摘していますが、現時点では、この仕組みに従って自己負担金を計算するのが県での慣行のようですので、当院でも平成20年11月分から、この仕組みに従って自己負担金を計算し、患者さんに支払いをお願いすることとなりました。

以上で説明したように、この制度による自己負担金の計算には矛盾があるので、県には改善を求めていきますが、現状ではこれに従って、計算していきますので、支払いについてご理解をお願いいたします。

以前の若年者の自己負担金についてですが、県の慣行に従えば、本来は月額200円で良いところを400円頂いていた、ということになってしまいますが、高齢者と若年者の自己負担金の公平という観点から、なにとぞご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。
どうしても納得がいかず、返金を求める、というような患者さんがおられましたら、院長までご相談ください。

私は患者に対して、「患者さま」というような過剰な謙譲の呼びかけはしたくない。もちろん医療もサービス業の側面もあり、患者は「お客様」であるわけだが、そのような過剰な謙譲が、良好な医療者-患者関係のためにかえって弊害になると考えるからだ。
他の施設で透析を受けていれば払わなくてよかった余分な月額200円を払い続けてきたのだから、当然患者から返金要求があれば、返金しなければならないと思っている。しかし、この制度には、若年者ほど月額負担が減るという、福祉の観点からすると異常な矛盾点があるわけだから、その点を理解してもらって、なるべくややこしいことにならないようにしたいという意図がある。

しかし今回のことは改めて、透析という医療にかかる医療費について考える機会になった。透析というものは一回25000円くらいかかる医療を一人につき月に13回、つまり月額30万ちょっとの医療をその患者が亡くなるまで、ずっと続けていくわけだが、本人負担は月額800円、つまり一人につき月額30万の医療費をほとんど行政、つまりは税金、保険料から支払っていくわけで、透析人口が増えるということは国にとって莫大な医療費負担になっていくことだということを改めて認識した。