この季節には桃がある。
4個で680円。決して安い食べ物ではないが、甘い桃にうまく当たると本当に心の底からおいしい食べ物だと思う。
やわらかく、水分が豊富で、ほおばると甘い汁気が口中に広がる。果物の中でもおそらく桃が一番好きである。
しかし、この桃、非常に傷みやすい。そして桃の痛んだ姿はかなり無残である。
桃のむいだ皮、種、残された桃の果肉、そうしたものがわずかな時間で汚い茶褐色の残飯に変わっていく。
この賞味期限の短さ、傷みやすさ、傷んだ後の悲惨な姿が、桃のおいしさの代償として、おいしさを引き立てているのかもしれない。
人生の移ろいやすさ、盛りというものが必ず過ぎていくこと、日本の無常感はこの桃という果物もよくあらわしている。