道徳の成立基盤

永井均氏が、ヴィトゲンシュタインの解説で使っていた引用。どの著作であったか今となってはわからない。

A「君は全くテニスが下手だなあ」
B「下手のはわかっているけれど上手になろうとは思わない」
A「それならそれで構わないよ」


A「君のやったことは全く畜生も同然だ」
B「ひどいのはわかっているけど改めようとは思わない」
A「いや、君は改めるべきだよ」

①は価値の問題で②は道徳の問題。価値の問題においては、他人は個人の価値観に立ち入ることはしないが、道徳においては、他者は、個人が道徳に従うことを求める。道徳とはこのように、他者への強制力を生じさせる基準である。