食事制限

透析患者には食事制限が存在する。
カリウム、リン、塩分を制限し、鉄分、蛋白、カロリーは十分摂取しなければならない。
検査値を見て、制限ができていない場合は、我々医療スタッフはその旨、患者本人に注意しないとならないが、それを患者は「怒られた」と感じる。
それは患者自身の生命予後とQOLを高めるためには、こうした方が良いという、医学的アドバイスであり、患者がそれに従わなかったからと言って医療スタッフが不利益を蒙るわけでなく、こちらが感情的に「怒る」筋合いのものではない。
しかし、生活習慣、食事制限というものは、なかなか自分を律することが難しい領域である。周囲からのサポートがなければ難しいし、そのための知識も必要だ。透析患者が実際に知りたいのは、「あれはダメ、これはダメ、というが、それなら私はいったい何を食べたらいいの?」ということだ。
しかし、我々には医学的知識はあっても、栄養士の行うような、食事内容の具体的なアドバイスはできない。したがって、栄養士の方が透析の食事療法についてまとめた講義を聴くのには十分意味があると考え、昨夜は参加した。
総論として、食事の制限は、その患者本人のライフスタイル、生き方の問題だという主張は、それはそうだろう、と思うだけで特に感慨はない。
本当に知りたいのは具体的に「何を食べたらいいのか」という知識である。いくつかの有用であった断片的知識。
●リンについて
・卵白にはリンは少ない。卵黄にはリンが多い。
・米にもリンは含まれる。2度精米するとリンは減る。
・乳製品にリンは多い。低リン牛乳には鉄分も多い。
・骨付き小魚にもリンは多い。しらすを食べるなら骨のついていないものを。
カリウムについて
・生野菜果物は、細かく切る、熱を通すなどの細胞破壊操作でカリウムが減る。
・芋類にもカリウムは多い。これも同様に小さく切ると減らせる。
玉露カリウムは多い。番茶、麦茶、紅茶には少ない。
●塩分について
・酢の物にすれば塩分は不要。
・調理法として煮物は一番塩分が必要となる。揚げ物、焼き物だと少量で良い。
・薄口醤油は塩分が多い。だし割醤油は塩分が少ない。
・香辛料を使用する。
もともと知っていた事柄も多いが、役に立つ知識が多かった。
こうした知識は、医学的知識と性質を異にするが、有用性の点で何ら劣ることはない貴重な実践的知識である。
患者へのアドバイスに役立てたい。