善なる嘘

子供が小さいうちは、サンタクロースが実在すると思わせる、というような行事がある。
実際は親が購入したプレゼントをサンタクロースが子供に持ってきたように見せかけ、子供を騙すわけである。
「夢を与える」ためにやっているとされる、この行事、それでは夢を与えられているのはいったい誰なのだろうか。
答えはおそらく親自身なのだろう。子供は一時的にサンタクロースの存在を信じても、いずれそれは、子供を喜ばせたい、という親の善なる嘘だったことに気づく時がくる。
本当にサンタクロースがいる、と思えるような子供の幼い世界観と想像力、それによって得られる幸福感を、親は想像し、それを子供に与えるという夢を見る。子供がそういう幸福感を抱いてくれるだろうという予想で親は幸福感を得られる。

子供の人生の中で、ごく短い期間しか生きられない、この嘘を、子供が振り返って、嘘だとわかっても、楽しい気分で振り返ることのできるような、そういう嘘に、できればしてやりたいものだ。