病気になるのは誰のせいか

病気は天災と同じく、その被害者自体が責を負うべき事態ではないとされる。
糖尿病やアルコール依存症の一部の人々を除けば一般的にはそれが当たり前の考えだろう。病気になりたくてなる人はおらず、そうなったのは本人のせいではない、と考えるのが普通だ。
しかし、大学の時、体育会の野球部に属していた同級生が、体育会では、風邪をひいたら、それは自己管理の至らない本人の責任であり、それを恥じて責を負うべき事態である、と考える風潮があることを聞いた。
風邪というのは上気道のウィルス感染症であることがほとんどであり、本人がそのウィルスに対する免疫があるかどうかで発症するかどうかが決まる。すなわち本人にその責任はないと言えるはずだが、しかし、誰でも風邪をひいたとき、あの時無理をしたから、とか寒い中薄着してたから、とか何か原因に思い当たることが多い。そのあたりがどのように感染成立に関与しているかは医学的には明らかではないが、古来、人々が感じてきたことにはそれなりの正当性があるだろう。

つまり、風邪をひくのはある程度、本人の責任だ、というのを誰もが薄々感じてる。
そのことには病気というものを考えるときのもう一つの見方の端緒が潜んでいるように私は考える。