また一人

昨夜呼ばれてお亡くなりになったのは膀胱癌の再発した高齢の男性だった。
私が彼の膀胱全摘に主治医として入ったのは2003年のことだから4年前のことである。
手術してから3年で再発して、再発後半年でお亡くなりになったことになる。
果たしてこの手術をやる意味はあったのか。
回腸導管のストマの管理は彼は完璧で、パウチをつけたままテニスも登山も楽しむほど高いADLを保った方であった。
いつも外来のフォローアップで真っ黒に日に焼けた姿で現れていたのが偲ばれる。
再発入院してからも、歩けなくなるくらいなら死んだ方がマシだ、と高齢ながらも化学療法を望むなど、生きることに高い志と意志を持った方であった。
こんなことであれば、術後にadjuvant chemotherapyをしておくんだった、などと後悔する部分もあるが、彼は術後、常に病気と闘い、前向きに生きてきたという意味で、治療をした意味はあった、と考えたい。
意味の無い言葉ではあるが、ご冥福を祈る。