why be moral?
- 作者: 永井均
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: 単行本
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ウィトゲンシュタインの「倫理に関する講義」の中にある次のような所見も参照。
誰かが私に「君はテニスが下手だね」と言ったとき、私が「下手なのはわかっているけど、うまくなろうとは思わない」と言ったとすれば、その人は「それならそれでいい」と言うだろう。しかし私が誰かにひどい嘘をつき、その人が私に「君のしたことは畜生も同然だ」と言ったとき、私が「ひどいのはわかってるけど、行ないを改めようとは思わない」と言ったとすれば、その人は「それならそれでいい」と絶対に言えないだろう。その人は「いや、君は行ないを改めようと思うべきだ」と言うだろう。
(大修館「ウィトゲンシュタイン全集5」384-5頁 ただし訳文は要約的に変更。)
ライトがエルに勝てないのは、こうした事情による。つまり、ライトの勝利でストーリーを終えると、「ライトは負けるべきだ」と多数の読者から言われることになるのである。たとえ現代の道徳は常に相対化され、内在化されていないと言っても、現時点で成立している道徳として一般的に普及している最低ラインというものがあり、キラの勝利によるエンディングはそれに抵触してしまうからだ。キラは設定の時点からエルに負ける運命にあった。
これでもうまく言えている気はしない。すっきり言えると気分がいいと思うのだが、、、