いーえ、トップレベルでちゅ。

朝、通勤のときに見上げた空は雲ひとつ無い快晴だった。
昔学生だった頃にこういう季節に何かのにおいがしていた。
世の中の役には立たないけれど、古くから受け継がれる近代の思想と世間から隔離された学究的な、古い建物、古い書物、そして落葉の匂いが混じったような。
私の京都での学生時代は、こうした匂いに包まれていた。当時は世の中の何の役にも立たず、責任も無い自分の立場がもどかしかったが、今となってはとても懐かしい、愛すべき場所であった。秋の大学図書館の2階で、窓外の色づいた銀杏など眺めながら、卒業試験の過去問と、芥川の全集などを並べて、まどろんでいた日々。
即物的な事物に囲まれながら、ふと見上げた空に、そうした時代を思い出した。