キューブラ・ロス

HRPCターミナルでCPAとなり、夜中に呼ばれた。
DNRはとってあり、何も問題なくお見送りする予定であったが、当直医が死亡宣告した途端に家族のうちの一人が暴れた。
当直医を口汚く罵り、殴りかからんばかりの勢いであったという。
結論としていえばこれは死の受容4段階の拒否の段階の表れで、肉親の死を、DNRに同意していたのにも関わらず、受け入れられなかったのである。
小指のない人だったので、そういう素性もあったのだろう。とにかくひどく暴れ、私がムンテラしたときもひどく激昂してこちらの言うことに聴く耳を持たない。誰かに八つ当たりしたくて仕方ないのだろう。
こちらとしては、疼痛管理、ターミナルケアについては市中病院としてできるレベルのことはきちんと行っていた。何も責められるべき落ち度はない。
こういうことがあると、もちろん、遺族は肉親を亡くしてつらい、ということは理解できるが、報われない、という気持ちになる。
主治医制であるから、夜中の12時過ぎてからでもCPAならば出勤して、死亡の手続きを取る。これまでもその方の最後がなるべく安らかなものとなるように、いろいろと考えてもきた。
それらが、このような激昂した家族に八つ当たりをされるという形で終焉を迎えると、私も人間だから、がっかりするし、やる気を無くす。
もちろん、レトロスペクティブには、このような遺族の性格を見抜いて、死亡する前段階のムンテラから、死の受容を開始させるような、十分なコミュニケーションが必要であったのに、それを怠った、という事がいえるのであろう。予想よりだいぶ早くに、死の転帰が訪れた、ということもこの不幸な出来事の一因だ。