製薬採用について

現在、私は透析室の副室長という立場であり、透析で使用する薬剤については、大体私が決めていくという権限がある。長期透析においては、腎性貧血を改善するために、エリスロポイエチン製剤が不可欠であるが、当院では、伝統的に曜日のコースごとに、二社の製品を使い分けてきた。このEpo剤は一月あたりに透析室だけで100万〜150万円分の薬剤が使用される。これを、誤投与を防ぐという観点から、一社の薬剤に統一して欲しいというような声が、ものの分かってない主任あたりから出て、現在、その方向で動きつつある。
たしかに、製剤が2種類よりも1種類のほうが誤投薬の可能性は減るであろうけれど、投与量さえ間違えなければ、エリスロポイエチンの中身はほとんど変わらないわけであるから、患者さんに実害は無い。そして、現在までにそのミスが生じたという報告は無い。
なぜ二社の製品を同時に使うかといえば、それは競合させるためである。市場が1社独占となってしまえば、その製薬会社は企業努力をしないであろうし、その一社に体制として決めてしまうのであれば、他社からの情報提供、新薬情報などが入ってきづらくなる。
私は旧来の体制を守ろうとする守旧派ということになるのだろうが、この企業の競合という要素は上述の形ばかりの誤投薬を減らすという名目よりも、医療内容の維持向上という観点から、優先されるべき事項だと考える。
結局は私は名ばかり室長の雑用係で、このような事項の最終決定権は当科部長にあるので、そこで決定されることであろう。