月にタッチして帰ってくるくらいわけなかったぜ

肩甲骨は翼の名残、という。
始祖鳥だった頃、我々も空を飛んでいたその名残というわけだ。
夢があるね。まるで心力が強ければいまでも空を飛べそうな勢いだ。
けれども本当にそうだろうか?
一般に鳥類にしろ、滑空可能な哺乳類にしろ、翼というのは上肢に羽が生えてできるものであり、上肢と別に新たに翼が生えてくることなど、発生学的、解剖学的に考えられない。
つまり、想像上の天使のように、翼を持ち、且つ自由に使える上肢もあるというのは不自然な想像なのだ。
したがって、我々人類の肩甲骨の部位にもともとは翼がついていたなどと考えるのは、発生学的解剖学的に言って不自然な想像だ。
翼の名残を求めるなら、それは我々のこの両手こそが翼の名残である。
飛びたければ精一杯これを振り回す以外にできることはない。