コンタクト

カール・セーガン原作、ロバート・ゼメキス監督、ジョディ・フォスター主演。

コンタクト 特別版 [DVD]

コンタクト 特別版 [DVD]

久しぶりに映画で感動した。カール・セーガン氏の原作も読んでみたくなった。
羊たちの沈黙のときも衝撃的だったが、ジョディ・フォスターは知的で意志の強い女性の役がうまい。意志の強さが全身からにじみ出る。
以下、ネタばれを含むので感想を畳みます。
宇宙人との接触、というテーマが科学と宗教のせめぎあいを通して、人間にとっての真実とは何か、というテーマに昇華されている佳作。まとめるとそういう評になるのだろうか。
この物語の中で、エリーは結局宇宙人と接触したのかそうでないのか。これは視聴者の判断に任される。ハデンという得体のしれない資産家の仕組んだトリックに乗せられただけだったという見方も十分可能(ビデオの録画時間18時間も初めからセットされていた、と解釈可能)、エリーも結局のところ証拠は何もないことを認める、けれども、それでもその経験(コンタクト)は彼女にとっては疑いようのない真実だった。天涯孤独で、ずっと一人で宇宙にばかり心向け、周りの他人に心を閉ざしていたエリーが、その感動を周りに伝えたいという気持ちにあふれ、終幕では子供たちへの教育に取り組んでいる。
彼女にとっての真実は、万人にとっての真実なのかどうか。その判断は視聴者に任される。科学は実証主義であり再現性、普遍性がなければ客観的な真実とはされないが、個人にとっての揺るぎない真実というものがある。そういった真実は多くの場合むしろ宗教がテリトリーとするものであることも多いが、宗教や科学を超えた、生きていく上での真実、それは視聴者個人個人にも訪れる、という意味で、この物語の真偽自体が視聴者の判断に任される、という構造が、その「真実」というものの性質を2重に視聴者に示している。

多くのマイナス評価としてあげられる、北海道基地の似非ジャポニズムというかその描写は確かに拙劣で滑稽だけれども、そんな不自然さを吹き飛ばすくらい、この真偽が視聴者に預けられる、という構造には感動した。

また、ロバート・ゼメキス監督の手法らしいが、ワームホール中で銀河の美しさに感動するエリーの顔が、一瞬幼少時のエリーの顔と合成されたりする、細かなCGを使った描写が素晴らしい。こうした、ちょっとしたシーンに手の込んだ演出をちりばめるという手法は本当に素晴らしいと思う。
ゼメキス監督と言えばバックトゥザフューチャーだが、他にも「永遠に美しく」「ベオウルフ」最近ではディズニーの「クリスマスキャロル」など、いろいろ監督作品を見てみたい、と思った。