それでもボクはやってない

周防正行監督作品。
痴漢冤罪の話。
巷で評判なので(評判になったのは少し昔かもしれないが)DVDを借りて観た。
題名を考えれば、どういう判決になるか、当然予想できるのに、それでもその反対の結果を期待して最後まで観させるところが、力量だと思った。
私の携わっている医療界にも言えることではあるが、法曹という世界も、本来なら合理的精神に基づいて築かれた世界であるはずなのに、あまりに複雑化、専門化されすぎているために、一般からみればどう考えても理不尽、不合理、といえるような事態がまかり通ってしまう、そんなところがある。
それをうまく描いている作品だと思う。
これは、冤罪の被告人の視点に終始する作品だが、さらに被害者の視点、真犯人の視点を使って、真実を錯綜させるような作品もまた、面白いのではないか、と感じた。まあ、芥川の「藪の中」の手法だが。